葉にクリップをつけた観葉植物がシンセサイザーを弾き始める ―― フィナンシャル・タイムズも注目の「植物の音楽」PlantWave、癒やされるのは植物のせいか脳のせいか

机の上の観葉植物に、小さなクリップを二つ挟む。すると、スマホからピアノやシンセサイザーの音が流れ始める。植物が「弾いている」音楽です。英フィナンシャル・タイムズが「植物に耳を傾ける静かな理由」と題してこの装置PlantWaveを取り上げ、話題になりました(2026年7月)。聴くと落ち着くのはなぜか、植物は何を奏でているのか。耳と脳の研究、そして植物が出す音の研究から考えてみます。
植物に電極をつけると、音楽が流れてくる
PlantWaveは米国のアーティスト、ジョー・パティトゥッチさんが開発した手のひらサイズの装置です。葉にクリップ型の電極を二つつけ、その二点間の電気の通りやすさ(電気伝導度)がわずかに揺れるのを測る。その揺れを波形にして音の高さに置き換え、アプリで選んだ楽器の音で鳴らす――というのが公式の説明です。植物が活発なときは音符が増え、静かなときは一つの音が伸びたり止まったりする。同じ植物でも、窓辺と山道では違う曲になるそうです。
ただの珍品ではありません。PlantWaveは今年3月のSXSW(米国の音楽・テック祭典)でライブ演奏を披露し、売上の1%を、ブライアン・イーノさんが共同設立した環境財団EarthPercentに寄付すると発表しました。アンビエント音楽の生みの親と「植物の音楽」が、ここでつながっています。
癒やされるのは植物のせいか、脳のせいか
PlantWaveを聴くと心が落ち着く、という声はたくさんあります。音楽を聴くとストレスの指標が下がることは、104件の臨床試験・約9,600人のデータをまとめた分析で示されています。そこに、脳の働きも加わっていそうです。
スウェーデンの研究チームは、課題の合間の休憩中に、参加者へ同じ「ザーッ」という雑音を聴かせ、一方には「滝の音です」、もう一方には「工場の機械音です」と伝えました。すると「滝」と聞かされた人たちのほうが、休憩のあとで頭の疲れが取れたと感じていました。脳は音と一緒に、「何の音か」という物語まで受け取っているようです。「いま、この植物が弾いている」と知って聴く音楽は、脳にとって特別な一曲なのかもしれません。
嘘発見器が汗を読むように、PlantWaveは葉の「水」を聴く
では、植物は実際に何を「弾いて」いるのでしょうか。実はPlantWaveの回路は、嘘発見器にも使われるのと同じ仕組みです。嘘発見器は、緊張で汗ばんだ皮膚の電気の通りやすさなど、体の反応から人の心の動きを推し量ります。植物の葉で、その汗の役を果たしているのが「水」です。電極のあいだの水の量が、光合成や葉緑体の動きにつれて刻々と変わり、その揺れが音符になっています(メーカーの説明)。
つまり、音楽に揺れを与えているのは植物の水で、それを特別な一曲にしているのは聴き手の脳。癒やしは、植物と脳の合作なのかもしれません。しかも、水の揺れには植物の様子も表れます。のどが渇いた植物では揺れが小さくなり、PlantWaveの音楽はやがて沈黙に変わるそうです。植物の心まで読めるかはさておき、この揺れから「のどが渇いたのかな?」と耳で聴き分けられるとしたら、素敵なことです。
のどが渇いたトマトは、プチプチと鳴り出す
少し話は変わりますが、植物は自分で音を出すこともあります。イスラエルのテルアビブ大学のハダニー教授らが植物に超音波マイクを向けると、水を切らしたトマトは1時間に35回ほど、プチプチ(梱包材)をつぶすような音を立てていました(Cell誌)。元気なトマトは、とても静かでした。
人間には聞こえない高さですが、大きさはふつうの会話くらい。茎の中の水の通り道で、気泡がはじける音ではないかとみられています。しかもこの音には植物の状態が表れていて、教授らが作ったAIは、音だけで植物の水不足を見分けられました。
植物の「のどが渇いた」が聴こえる未来へ
この音を聞き取れれば、水やりのタイミングが分かるかもしれません。ハダニー教授らは、畑や温室にマイクを置いて、作物ののどの渇きを知らせる使い方を提案しています。人間の耳の代わりに、マイクとAIが植物の声を聞き取ってくれるわけです。
話をPlantWaveに戻すと、こちらでも今日から試せることがあります。昨日まで鳴っていた植物の音楽が急に沈黙したら、土を触ってみる。メーカーのおすすめです。いまは癒やしのために聴いている植物の音楽が、いつか「お水ちょうだい」まで教えてくれる。窓辺の鉢植えと耳でつながれる日は、そう遠くないのかもしれません。
「風の音がちょっと違う」――聞こえは耳だけでなく脳。何歳からでも鍛えられる耳の脳トレ
植物の音楽から話は少し離れますが、音は耳で受け取るだけでなく、脳で処理されてはじめて意味を持ちます。「音は聞こえるのに、言葉が聞き取れない」という悩みには耳だけでなく脳の聞く力が関わっていて、その脳は何歳になっても変わることが分かっています。私たちneumoが8年かけて研究開発した「キクモア」は、この脳の聞く力を鍛える「耳の脳トレ」。音を聴き分けるゲーム形式のトレーニングをスマホひとつで毎日続け、月1回のオンラインチェックで内容をその人に合わせます。自社の検証では、毎日30分・2か月で、雑音の中の聞き取りが平均3.1dB良くなりました(59〜88歳・16名。医療機器ではありません)。使っている方からは、こんな声が届いています。
「春の光、アウトドアで歩いていると、風の音がちょっと違う。土を踏みしめる音も、ちょっと違う。今まで気にしていなかった音が、気になるようになった」
―― 70代 女性(長野県)
「歌詞も、楽器の音もごちゃごちゃになって聞こえていた。それが、バラけて聞こえるようになった」
―― 60代 女性(岩手県)
いずれも個人の感想です。植物の声が聴ける日を待ちながら、キクモアの耳の脳トレで、まずは身近な音をもっと楽しんでみませんか。キクモアの詳しい紹介はこちら。
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