耳が悪くなる薬剤とはなにか?

今回のブログは主に医学論文誌The Lancetに掲載された論文をもとに書いています。
この論文ではアミノグリコシド系と抗マラリア薬が突出
まず抗生物質であるアミノグリコシド系薬剤がトップで年間約1,960万件の新規難聴者が発生していると推定されます。
もう1つが抗マラリア薬で約1,230万件が難聴と関係していると思われます(ただし、不可逆的な難聴に繋がるというエビデンスは限定的)。
アミノグリコシド系は主に発展途上国(先進国でも使われている)で、抗マラリア薬もアフリカや東南アジアで大量に使用されています。
アミノグリコシドと白金製剤は使った人の中での有病率が高い
アミノグリコシド(抗生物質)の場合は難聴有病率に関して短期で16.6%、長期(ただしMDR-TB治療)では40.6%という高い値になっています。白金製剤(抗がん剤)の難聴有病率もシスプラチン単独では49.2%、カルボプラチン単独では13.47%です。
アミノグリコシドと白金製剤であるシスプラチンは不可逆でもあるので、これらの薬剤で難聴になってしまうと元に戻らないとされています。
聴力検査に異常がなくても危ない場合がある
聴力検査で測ることが少ない高音域から難聴になる耳毒性薬剤
アミノグリコシド系薬剤のなかでも「アミカシン」や「カナマイシン」は、9,000Hz以上(Extended High Frequency)の非常に高い周波数に相当する内耳の細胞(有毛細胞)がやられていき聞こえづらくなっていきます。従って通常の聴力検査で測る4,000Hzや8,000Hzには最初の頃は影響が出づらいため、見逃されてしまう可能性があります。
音ではなく平衡感覚をつかさどる「前庭」がやられてしまう
耳の主要器官である内耳には音の高さを処理する「蝸牛(かぎゅう)」と呼ばれるものの他に「前庭(ぜんてい)」という平衡感覚などのバランスに関わる器官もあります。
ゲンタマイシンやストレプトマイシンはこの「前庭」に対する毒性(前庭の感覚細胞への障害)を持っているので、聴力検査では問題が出づらいと言われています(出ないわけではない)。
遺伝子によっては注射1回で難聴になることも
「母方の親族に注射で急に難聴になった人がいる」みたいな場合には、あくまでも可能性ですがミトコンドリアDNAの遺伝子変異(MT-RNR1 m.1555A>G変異)によって、ごく短期でのアミノグリコシド投与でも重度の難聴に至る可能性があります。
<neumo 若林龍成メモ>
「母方の親族に注射で急に難聴になった人がいる」という点については、点滴を受けることになったらその情報を担当医に伝えるようにしてください。

