ユニバーサル・スタジオ・ハリウッドの絶叫コースター、補聴器を外しても悲鳴が聞こえる住民――その理由は脳にある

住宅地のそばを走るジェットコースターと、乗客の悲鳴に耳をふさぐ住民のイラスト

「絶叫は心の中で」が、ユニバーサル・スタジオ・ハリウッドで笑い話ではなくなっている

新型コロナの頃、日本の遊園地がこんなお願いをして話題になりました。「絶叫は心の中で」。飛沫を減らすためでしたが、これが今、太平洋の向こうで笑い話ではなくなっています。

ユニバーサル・スタジオ・ハリウッドの新コースター「Fast & Furious: Hollywood Drift」は、この夏の試験運転の段階から、隣の住宅地に騒音の苦情を受けていました。試乗した米メディアの記者が驚いたのは、機械の音は拍子抜けするほど静かなのに、乗客の悲鳴は近所に届くほど大きいこと。うるさいのは機械ではなく、悲鳴だったのです。

3年かけた静音化が、悲鳴に負けた

ユニバーサルは3年をかけてこのコースターの静音化に取り組み、悲鳴が出る場所にはガラスの遮音スクリーンまで用意していました。無人の試験走行では、住民が「ささやくように静か」と評したほどです。ところが人を乗せると、30秒に1回、それが1日10時間の悲鳴。測定では条例の基準内でも、住民は「窓を閉めても聞こえる」と訴えていると、米ニューヨーク・タイムズ(NYT、2026年8月22日)は伝えています。

補聴器を外しても悲鳴が聞こえる、という住民

住民の訴えの中に、聞き捨てならない一言があります。補聴器を外しても悲鳴が聞こえた、と話す住民がいたと、NYTは報じているのです。

補聴器を外せば、耳に入る音は小さくなる。それでも悲鳴は届く。「うるさい」という感覚は、音量計では測れないのです。

別の住民の言葉も、同じことを指しています。「遊園地の音には慣れている。でも悲鳴は新しくて、聞き流すことができない」。音を小さくしても、慣れても、聞き流せない。その理由を考える手がかりは、耳ではなく脳にあります。

悲鳴は「大きい」のではなく「刺さる」

2015年、学術誌Current Biologyに載った研究が、悲鳴の正体に迫っています。悲鳴を特別にしているのは音量ではなく、音の強さが1秒に30〜150回も細かく揺れる「粗さ」でした。話し声にはこの揺れがなく、悲鳴にはある。サイレンや火災報知器も、同じ揺れを持っています。

そして粗い音ほど、脳の扁桃体――危険を処理する部位――が強く反応し、人はその音を怖いと感じる。脳は悲鳴を「聞き流してはいけない音」として、優先的に処理するようにできているようなのです。

防音壁も、回転する車両も、条例の数字も、すべて音の大きさへの対策でした。しかし悲鳴の聞き流しにくさには、音量だけでなく、こうした音の性質も関わっている可能性があります。「私たちの脳は悲鳴に反応するようにできている。生物学なのです」。38年住むという女性がNYTに語った言葉は、この研究の見方とよく重なります。

住民「なくせとは言っていない」。そして9月16日、開業

住民の要求は「コースターをなくせとは言っていない。静かにしてほしいだけ」。一方、コースターマニアはSNSで「もっと大声で叫んでやる」と息巻いていると、NYTは伝えています。

その後、米テーマパーク専門メディアによると、ユニバーサルは8月中旬に防音壁を2枚追加することで住民側と折り合いをつけ、コースターは9月16日に正式開業しました。

音を小さくする技術は、確かに進歩しました。それでも「うるさい」かどうかを最後に決めているのは、音の大きさではなく、その音を受け取る脳のほうかもしれません。

余談:補聴器で音量を上げても聞き取れない人へ――「耳の脳トレ」という選択肢

今回の悲鳴の研究から、雑音の中で会話を聞き取る仕組みまで説明できるわけではありません。ただ、私たちの「聞こえ」が耳に届く音の大きさだけで決まるのではなく、脳での処理も関わっているという点は共通しています。

特に騒がしい場所で会話を理解するには、耳から入った音を脳で処理し、必要な声を捉えて理解する複雑な働きが必要です。補聴器で音を大きくしても会話が追いにくい、という声が多いのはそのためだとされています。

「耳の脳トレ」キクモアは、この脳の「聞く力」を鍛えることを目的にした、脳科学の考え方に基づく聴覚トレーニングアプリです。補聴器をつけても騒がしい場所で会話が追いにくいと感じている方に、耳ではなく脳の側からのアプローチがあることを知っていただければと思います。

※騒音問題の経緯は2026年8月22日公開のNYT記事に基づきます。NYT掲載時点では正式開業日は未発表でしたが、その後、9月16日に開業しています。

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補聴器をつけても、聞き取りづらい?耳の脳トレキクモア