宇宙空間での難聴リスクと対策(ロシア編)

めちゃくちゃうるさい宇宙船
歳をとってどんどん聴こえが悪くなる加齢性難聴の主な原因の一つは騒音です。様々な騒音に囲まれて生活している現代人の宿命です。しかし、そんな地球上と比べて遜色ないかそれ以上にうるさい可能性があるのが宇宙船の船内です。
今回は主にロシアのデータを紹介しますが、かつて打ち上げ時の船内騒音は128 dBにも達しました。これはNIOSH(米国国立労働安全衛生研究所)の職業的な基準で言えば1日にさらされていてもよい時間は、たったの1秒台です。今は基準も厳しくなり改善されているようです。
それでも、軌道に乗った後の宇宙船内で運動をするロシア製ランニングマシンやファンを掃除機で清掃する作業下においては85 dBAを超える騒音が観察されています。
これはパチンコ屋さんの店内や地下鉄で窓を開けたうるさい状態に相当します。
個人の騒音暴露もしっかり計測している
ロシアもNASAも個人別の騒音暴露(騒音にさらされている時間と度合い)と場所別のうるささの両方をきちんと計測しています。
耳栓など保護具着用必須のNASA、使用を促すロシア
NASAは平均騒音レベル(16時間騒音平均を示すLEQ16)が72dBAを超える場合は耳栓などの耳の保護具の着用が必須です。
ロシアの場合「環境の騒音レベルが基準を満たせない場合は、個人用の防音保護具を使用しなければならない」などのルールはありますが、NASAほど細かい運用ルールはありません。それでも、船内の小型研究室(MRM1)でファンの掃除をしている時(85〜87dBAだったという記録)には、ノイズキャンセリングイヤホンを使用していたことなどが報告書に記述されています。
宇宙飛行士の顕著な聴力低下を認めるロシア
ロシアの宇宙飛行士に対するある調査では、100%全員が一時的な聴力低下(TTS)を経験しています。また、30年間にわたるロシアの宇宙飛行士33名を対象にした調査では、特に4,000 Hz〜6,000 Hzと言った高周波帯でのダメージが酷く、5名については50dBも聴力が低下し、別の12名についても30 dBも聴力低下を起こしています。
これらは当時のロシアのミール(Mir)宇宙ステーションがうるさく、作業時間帯に70.9〜76.5 dBAもの騒音が発生していたためです。
ミールの長期滞在者では約3分の1に永久的な聴覚障害が観察されています。
低音域については地球帰還後30日〜60日で部分的に回復する傾向にありますが、2,000 Hz以上の中〜高音域については上記の通り一部の人は聴覚障害が残っています。
ロシアのデータについては今よりもうるさい環境だった2001年よりも前のデータであることにも注意が必要です。
NASAについても最近(2024年〜2026年)の報告によると、低音域(250〜500 Hz)について一時的な聴こえの変化(10dB以上の悪化)を経験している宇宙飛行士が約60%もいることがわかっています。
<neumoメモ(若林 龍成)>
加齢性難聴を悪化させる要因の1つが騒音です。宇宙空間(宇宙船)という特殊な環境でなくとも、日々我々は騒音にさらされているので、耳栓やノイズキャンセリングイヤホンを使用するなどして耳を保護することが重要です。
「うるさい中での聴こえ」についてはLINE上で簡単に測定ができますので、以下のリンクからLINE友達登録をして試してみてください。


