クマさんスキーできるの?(Can Bears Ski?)

不思議な絵本のタイトル、その理由は…

「クマさんスキーできるの?」はレイモンド・アントロバスが書いた絵本です。クマがスキーをするような、のどかな絵本ではありません。

著者のレイモンド・アントロバス自身は小さい頃から難聴でした。しかし両親がレイモンドの難聴に気が付かなかったため、補聴器や人工内耳の処置がないまま過ごしていました。

みんながレイモンドに “Can you hear me?”と尋ねますが、レイモンドには “Can Bears Ski?”と聴こえてしまいます。

この体験を絵本にしたのが “Can Bears Ski?”で、絵本の中では難聴の子グマが主人公です。

当初、絵本を書きたくなかったレイモンド

レイモンド・アントロバスは詩人です。小さい時に『Happy Birthday, Moon(ぼく、お月さまとはなしたよ)』を読んでもらうのが好きでした。と言ってもちゃんとは聴こえないので、父の体の振動から物語を感じ取っていました。

彼の幼い時の体験をもとにした彼自身の詩である『Happy Birthday, Moon』を文学フェスティバルで朗読していたところ、出版社の目に留まり絵本の執筆を依頼されますが「自分は詩人である」という自負から断っていました。

ろう学校の図書館には「耳の聞こえない主人公」の本が一冊もなかった

レイモンド・アントロバスはある時期、かつて自分が通っていたろう学校に招かれて指導を行っていました。

図書室の棚を見たら「聴覚障害を持つ主人公」の本が一冊もないことに気が付きます。その時彼は「自分が書かなくては」と決意することになります。

父親に対する心の傷を癒やすレイモンドの絵本

「クマさんスキーできるの?」では主人公が難聴の子グマで、面倒を見てくれるのはお父さんクマです。

しかしレイモンドが実際に小さかった頃は、病院の予約や補聴器の手配などは全て母親が行い、父は一切関与しませんでした。

それどころか父は彼のことを「limited(能力が制限された)」と表現することもありました。

難聴の子グマを世話するお父さんクマを登場させることで、レイモンド自身の心の傷を癒やしていると見ることもできると思います。

<neumoメモ(若林 龍成)>

レイモンドさんとは異なる分野になりますが、書くことや何らかアウトプットすることで癒やされるというのは私も経験しているので、少し理解できる気がしました。

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